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貪られる肉体 - 私のカラダは、誰のモノ?
第5章 回されるもの。
「……いやぁ」

 首元だけじゃない、腕、お腹、足等全身にくっきりと残されていた。

「んぐっ……うぅ……ちが、う」

 私はとんだ間違いをしていた。

 ママへの感謝の気持ちが強すぎて泣いたんじゃない。

 ママに嘘をついた自分が情けなくて涙が出てきたんだ。

 “委員会お疲れ様”

 あの言葉は私の嘘から出来上がった事実。

「ごめん……」

 昔から私の言うこと、話すことは信じてくれていた。

 そして、何より私のことを思ってくれた。

 十年近く前だろうか。

 興味本位で花瓶に手を触れて、誤ってガシャンと割ってしまった時。

 私は怒られるのが怖くて、聞かれてもないのに自然現象だったと誰にでもわかる嘘をついてしまった。

 ママはそんな言い訳にも過ぎない発言よりもまずは私が怪我をしていないかを第一優先した。

 本当のことを話すと結局怒られちゃったっけ。

 それでも単に怒りをぶつけるという自己主張の強いものではなくて、私に理解を求めようとする行動は幼い私に反抗心を植え付けなかった。

「私が悪いんだけどね。でもね、今回のことは話せないの」

 けれども、もう子供じゃない。

 大人から見るとまだまだ未熟な歳かもしれないけれど、理解出来ないわけなじゃない。

 間違ったことを理解しているだけで、それに気づいていないわけなじゃない。

 それも、過ぎてから後悔してるなんて笑っちゃうよね。

「自分でなんとかするから。だから……だからね」

 鏡に映る私は弱くて、脆くて、今にも崩れ落ちていきそうな顔をしているけれども。

「今はその優しさだけ受け入れさせて」

 お風呂から上がりベットに横になると、どっと疲労が滲み出てきて私を微睡みの中へと誘った。

 今日が土曜日であることを忘れていて、起きたらまた学校という現実に引き戻されることに悩まされながら眠った。
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