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最後まで
第12章 ―イツル―
イツルはカット村で生まれた。
しかし、その時には既にチーチュー領になっていて村は貧困だった。
イツルの家には既に三人の兄弟達がおり生まれたイツルは病弱だった。
両親の苦渋の決断により、イツルはマンダルガマ山へと棄てられた。
母親は三日三晩泣き崩れたそうだ。
チーチュー領主が視察に来たのはその時だった。
「女が生まれたそうだが?」
村長に発した第一声だった。
「たしかに…産まれましたが…それが?」
村長は領主の意図が分からず、おろおろと聞き返す。
「我に献上せよ。娘に与えたい。」
その言葉で、イツルの両親の判断が寧ろ良かったのだと村長は確信した。