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Last Kiss
第3章 あなたを知りたい
荷物を置き、便座に座る前にしゃがんでしまった。思わず手で耳を塞ぎ込む。
『……凛音、ごめん』
「………」
『…ごめん、…ごめん…怖がらせた…ごめん』
「………」
『凛音、出てきて…閉じこもらないで…』
郁人の声が響く。でも、私の耳の中だけで…
お母さんとお喋りする小さな女の子
友達を待つ女の子
誰にも届かない、私だけ聞こえる悲しい声…
私も悲しくなる…それは、同情だって郁人に罵られてもいい、叫ばれたって、叩かれたって、何されていい…何か痕が残るのなら…
第三者が、ここに郁人がいることを分かってくれるのなら…
そんなことを考える私は郁人にとって最も嫌な奴だった。