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梨華との秘密
第9章 乱れ咲く縄華
 一瞬、恵梨香の動きが止まり、内腿を擦り合わせるような歩き方に変わった。
 俺の方を見て、悔しそうに唇を噛んでいた。
 ただ、瞳はキラキラと欲情に濡れていた。
 課長のデスクに着く直前に、携帯をきった。


(ふふ、どう来るかな?今夜は支社長とデートやろし、まっ、あとちょっと楽しませてもらうかな?その方が彼女も好きやろからな。ふふっ。)


 そんなことを考えていると、当の美澤恵梨香が俺のデスクに近付いてきた。
 俺に声をかけるまで待とうと思っていたら、ふいに背中をトントンと叩かれた。
 振り替えると、恵梨香ではなく、


「係長、この書類にサインが欲しいんですが、よろしいでしょうか?」


「えっ、あぁ、片山君、これは、年休とこの間の出張のだね。いいよ、ちょっとまっててくれますか?」


 同じ係の片山ミキだった。
 ショートカットに八重歯の可愛い女性社員だが、少し勝ち気なのが玉にキズだった。


「これで、いいかな?片山君。」


「あっ、はい、ありがとうございます。係長、あの帰る前でいいんですけど、少しお話ししたいことがあるんですけど、今日無理ですか?」


 真剣な表情が、魅力的だなぁ。
 いけんいけん、これ以上は無理やで!
 思わず、彼女を調教する妄想に捕らわれてしまっていた。


「今日かい?うーん、五分くらいならいいよ。会社の携帯は知ってるよね。帰る前にそいつに連絡をくれればいいよ。忘れると、いけないから。」


「はい、ありがとうございます。必ず連絡いれます。それから、私、係長の秘密知ってます。SMの、、。」


 一瞬、ギョッとなったが、おくびにも出さずに、


「ん?SM?されたいのかい?片山君?」


 俺にマトモに返されて、片山ミキが目を伏せ、


「あの、後で連絡しますので、失礼します。」


 顔を真っ赤にしながら、慌てて自分のデスクに戻っていった。
 俺の秘密、SM、何処から情報が?
 ほとんどの活動してないし、なんでやろ?
 なんやろ?
 わからへん?
 いくら考えても、思い付かなかったが、背中に視線を感じて振り返ると、


「松川係長、あの支社長がお呼びです。上で、お待ちしてますとのことです。」


 恵梨香が期待を込めた目で、俺をみていた。
 返事の代わりに携帯の送信を押し、彼女の立場を思い出させることにした。
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