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梨華との秘密
第11章 双華繚乱
 ユックリと二階の寝室へ入り、ソファーに二人を座らせ、俺は隣の部屋への扉を開け、


「秘密の扉を見せてあげるわ。ふふ、どうかな?」


 俺はユックリと、秘密のスイッチを押した。


「へっ、なに?何があるん?うそう、壁?」


「これ、なんなん?嘘でしょ!ママ、これって?!」


 母娘の驚く様が、俺には新鮮だった。


「うん、秘密の部屋やで。三人で誰にも邪魔されずに過ごせる空間なんや。声も外にはもれへんしね。まあ、明日は出掛けるからそれまでだけどな。」


 できるだけ、さりげない風に話したが、二人のショックはかなりのものだった。


「鏡が、あるの?あれは、滑車みたいの?つまり、本物!」


 驚いたまま発せられた三奈の言葉は、混乱していた。


「うそっ、吊られるの?あの、網みたいのは?パパ、本物?ショック!」


 梨華の言葉も混乱していた。
 しかし、混乱した言葉とは裏腹に、三奈と梨華の顔には興味の色がチラリと見えた。


「いやかい?この部屋の秘密を教えるのは、君らが初めてなんだわ。俺がコツコツつくりあげんや、ここだけね。いつかは、使える日があるかなってね。相手もいてへんのに変やろ?」


 実際、住宅会社や大工さんには頼めんもんなぁ。
 入口で立ち止まっていた二人だが、三奈が意を決したように部屋の中へ一歩を踏み出した。
 すると、母親に続くように梨華が足を踏み入れた。


「ここを入ると、元には戻られへんのん?なんか、不安?」


 私も、という梨華の小さな声が聞こえたが、


「いや、戻りたなったら戻れるし。それは君ら次第やな。どうなりたいかによるな。」


 そう言いながら、俺は棚から縄を取り出し並べた。
 なめしていない麻の荒縄を手応えを確かめながら、彼女たちの見えるように丁寧に並べていった。
 二人がゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。


「あの、私は戻れなくても構わないけど、梨華はまだ中学生だから、戻れるようにしてくださるんでしょう?そうじゃないと、私、梨華に申し訳なくて、、。」


 三奈の母親らしい言葉を聞きながら、


「そうだね。梨華のことは考えてあるよ。それに、梨華には戻ってもらわないと困るのは、俺だわ。だから、安心するんや。」


「ホンマに大丈夫なん?二郎さん、安心しても良いん?」


 三奈の顔に必死さが現れていた。
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