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左手薬指にkiss
第2章 籠の鍵の行方
 サアッと音が聞こえるくらいの勢いで瑞希の血の気が引く。
「な……んで。えっ」
 戸惑う口を親指でなぞる。
 少し湿った柔らかさ。
 喋ろうとした唇に指を当てて制する。
 それから中に入り込み舌を摘まむ。
「あ……あ、う」
 呂律が回らないまま、抵抗もせずに言葉を待っている。
 指の間で舌が震えてる。
「まさかと思うけど……代償にまた知らない奴とヤったんじゃないよね」
 声が凍っていくのがわかる。
 瑞希はふるふると首を振った。
 その脳内で雛谷に犯されなくて本当によかったと思っているのを類沢は知らない。
 けれど同時に誰に貰ったかと訊かれたら終わりだとも思っていた。
 未だに嘘一つ貫ける自信はない。
 ギリ。
 爪を立てるとヒュッと瑞希が息を詰まらせた。
 閉じられない口から唾液が顎に伝っていく。
「じゃあ、確かめさせて?」
 デジャヴ。
 記憶の奥に埋もれたとしても覚えているであろう言葉。
 瑞希は次の類沢の行動がわかって下半身を疼かせた。
 やっと解放され、痺れる舌を咥内に逃げさせる。
「せんせ……俺、その」
 言いかけた瑞希の口を鼻ごとがっと塞ぐ。
「質問以外喋るなって言ったよね? 三回目はないよ」
 さっきよりも一層増した怯え。
 それをなんとも思わずに下着を脱がせる。
 閉じようとした足を押さえて腿の付け根に手を這わす。
「ひっ……うく」
 そこを触れられた途端、瑞希がびくりと体を痙攣させた。
 爪先に力がこもる。
 そのまま指をあてがうと、その感触に違和を感じた。
 薬のせい?
 いや、それだけじゃない。
 つい歪んだ笑みを浮かべてしまう。
 瑞希も悟られたことに気づいたようだ。
「くく……ちょっと待ってよ、瑞希」
 あー。
 笑いが止まらない。
 低く笑う類沢に瑞希は体を固くする。
 髪を濡れた手で掴まれる。
「んっ」
「自分で処理したの?」
 黙って唇を噛みしめる。
 答えたようなものだ。
 けど、ちゃんと聞きたい。
 ぐいと髪を引っ張る。
「痛っ」
 目を見て、言え。
「答えて、瑞希。僕にヤられるために自分で穴をほぐしたの?」
「なっ……そ、ん……ちが」
 溜息が零れる。
 どうしてこうも苛めたくなる顔をする。
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