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僕の伴侶は蜷局を巻く
第10章 10
母の言葉に、ミハルは目をしばたたいた。顔が赤く上気していくのがわかる。「それは…問題ないみたい」

ハーリーはため息をついた。「よかった。最初は心配していたけど、あなたを見る彼のまなざしに気づいて、ぐっと気が楽になったわ。彼があなたに夢中なのは、明らかですもの」

こんどはミハルが笑う番だった。「彼は誰かに夢中になるタイプではないわ。どうせ私は性奴隷よ。かつての使い魔に凌辱される無様な女よ」

ハーリーはあてつけがましく片方の眉を上げた。「本気でそう思ってるの? じゃあ努力しなきゃね。ユウキにもっとあなたを知ってもらうのよ。そうすれば彼はすぐに、あなたを好きになるわ。あなたも彼を好きになりはじめているようにね」
「いいかげんにしてちょうだい。彼が私たちを滅ぼしたのよ。兄さんも殺されたのに!アイツを好きになれっての!?」
「戦争のことは別の話だから…」
「そんなの言い訳にもならないわ」
「そうかもしれないけど、逆に、私たちを助ける必要なかったわ。それに毘沙門王の臣下は最小限に徴発から逃れてる…ユウキがあの上司に手をまわしてくれたのよ」
「こ、心から助けてくれたわけじゃない、じゃない」
「思い通りにはいかないものよ」

ミハルには返す言葉が見つからなかったが、それでも、自分が彼を愛したりするとは信じられなかった。

だって彼を愛してしまったら、私は彼のもとを去れなくなる。かといって、自分は彼の所有物にすぎないと知りながら、とどまるのはとても無理だ。

【徴発】
本作では容赦なく幕府側に属した国民の財産は新政府が取り立てた。
軍隊が物資を国民から強制的に大義名分のもと取り立てること。
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