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僕の伴侶は蜷局を巻く
第10章 10
ミハルは貝殻をキャンドルとワインボトルの間に飾り、夕食の準備に取りかかった。スパゲティとサラダという簡素なメニューだが、ムール貝のスープとデザートのアイスクリームを足せば、とりあえずは形になる。運がよければ、ユウキが戻る前に、準備は完了するだろう。彼は食事をとって帰るような人ではない。

できれば今夜、話し合おう。正直に気持ちが混乱していることを説明してみよう。私は所有物ではなく、それ以上の存在になりたいのだ、と。

八時には、全ての用意が整った。あとは最後に火を通せば、すぐにでも盛りつけられる。ミハルはほっとため息をついて、化粧の具合を確認し、エプロンを脱いで、グラスに半分ほどワインを飲んだ。今夜、思いの半分だけでもユウキに伝える気があるなら、勇気をつけるために少しくらい飲んでおいたほうがいいだろう。

九時にはボトルが空になり、ミハルは寝室で見つけた彼の日記を読んでいた。

十時には蜷局を巻いて、頭の中はひとつの疑問でいっぱいだった。遅くなる、とは聞いた。私をひとりぼっちにしても気にならない人なんだわ。もしかして、急いで軍服で出かけたのは理不尽な妻といるのに疲れて、かねてより付き合いのあった人間の愛人に癒やしを求めたのでは?

十一時になり、ミハルは電話帳から陸軍省の番号を調べた。有るはずはない。この官舎と別荘しか知らない自分が腹立しかった。連絡がとれても彼にどう思われるだろう。無関心で冷淡な妻が、なぜ急にしつこくつきまとい出したのかといぶかるだろう。

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