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僕の伴侶は蜷局を巻く
第10章 10
一二時前。ユウキは明らかに、今日のうちに戻る気はないらしい。皮肉な成り行きにミハルは声をたてて笑いたくなった。自分が夫を求めているとようやく気づいたその日に、実はすでに夫を失っていたなんて。もしかすると彼を愛しかけているかもしれないと、ようやく考えはじめたその日に。せっかく話そうとしたのに、当の夫は家にも帰ってこない。
できることなら、発狂したかった。ここを出て実家に戻りたい。
でも、ここを出ることに何の意味があるだろう。彼は家に戻らないなら、見かけ倒しの家出をしても、気づかれることもない。いまのミハルが感じるのは、体じゅうの力を奪うような、疲労感だけだった。放心状態にも似て時間の経過が早い。
最後にもう一度キッチンを見渡したのち、ミハルは明かりを消し、寝室へ向かった。
最悪の事案だった。ユウキが明かりの消えた官舎に足を踏み入れたときには、予定の時間を大幅に超えていた。ミハルはとっくに寝ているだろう。最近の彼女を思えば、結果的にはよかったかもしれない。いまは彼女と一戦交えている場合ではない。今回の…いや、今までのことを話すためにも、できればひと晩ぐっすり寝てもらいたい。ユウキは首をまわした。「疲れたな…」
できることなら、発狂したかった。ここを出て実家に戻りたい。
でも、ここを出ることに何の意味があるだろう。彼は家に戻らないなら、見かけ倒しの家出をしても、気づかれることもない。いまのミハルが感じるのは、体じゅうの力を奪うような、疲労感だけだった。放心状態にも似て時間の経過が早い。
最後にもう一度キッチンを見渡したのち、ミハルは明かりを消し、寝室へ向かった。
最悪の事案だった。ユウキが明かりの消えた官舎に足を踏み入れたときには、予定の時間を大幅に超えていた。ミハルはとっくに寝ているだろう。最近の彼女を思えば、結果的にはよかったかもしれない。いまは彼女と一戦交えている場合ではない。今回の…いや、今までのことを話すためにも、できればひと晩ぐっすり寝てもらいたい。ユウキは首をまわした。「疲れたな…」