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僕の伴侶は蜷局を巻く
第11章 11
実家に着くと、ハーリーはキッチンの椅子に座り、泣いていた。「ミハル!」母は叫び、娘の腕にくずおれた。「お父さんが書斎に閉じこもったきり、出てこないのよ。心配で、心配で」
ああ、神さま。ミハルは祈った。どうか父がばかなまねをしでかしませんように。彼女は母の背中をさすり、慰めた。本当は自分も不安でたまらない。父はどんなに絶望していることか。
「お父さんのところへ行ってくるわ。私なら、話してくれるはずよ」だめだったら、人を呼ぼう。救急車でも警察でもかまわない。誰でもいいから、ドアを蹴破ってもらうしかない。
ハーリーが顔を上げた。表情は引きつり、声には絶望がにじんでいる。「ユウキとは話してみた? 彼はなんと言っているの?」
口が裂けても言えるものですか。一瞬、怒りが不安を吹き消した。ユウキなんて呪われればいいんだわ。約束を破ったうえに、あんな作り話を…。
「彼のとは離縁したの。もう会うこともないわ」
ハーリーは身を離した。赤くなった目が、ショックに見開かれている。続いて母は、娘の顔を両手で包んだ。
「ああ、ミハル、だめよ」
ミハルは母の手に自分の手を重ね、ゆっくりと引きはがした。「しかたないわ。こうなったからには、一緒にいる理由もないもの」
「でも、なにかワケがあるのよ。きっと打つ手はあるわよ」
「もう、決めたの。それにいまは、お父さんの様子を見に行かなきゃ。」
少したって、ミハルは書斎のドアをノックした。
「お父さん、私よ」しばらく待ってからノブをまわしてみたが、母の言うとおり、鍵がかかっている。「お父さん、大丈夫?」
「誰にも会いたくない」
父の声を聞いた瞬間、ミハルは全身を安堵の思いが駆け抜けた。彼女は木製のドアに額を押しつけた。「お願い、中に入れて。話があるの」
ああ、神さま。ミハルは祈った。どうか父がばかなまねをしでかしませんように。彼女は母の背中をさすり、慰めた。本当は自分も不安でたまらない。父はどんなに絶望していることか。
「お父さんのところへ行ってくるわ。私なら、話してくれるはずよ」だめだったら、人を呼ぼう。救急車でも警察でもかまわない。誰でもいいから、ドアを蹴破ってもらうしかない。
ハーリーが顔を上げた。表情は引きつり、声には絶望がにじんでいる。「ユウキとは話してみた? 彼はなんと言っているの?」
口が裂けても言えるものですか。一瞬、怒りが不安を吹き消した。ユウキなんて呪われればいいんだわ。約束を破ったうえに、あんな作り話を…。
「彼のとは離縁したの。もう会うこともないわ」
ハーリーは身を離した。赤くなった目が、ショックに見開かれている。続いて母は、娘の顔を両手で包んだ。
「ああ、ミハル、だめよ」
ミハルは母の手に自分の手を重ね、ゆっくりと引きはがした。「しかたないわ。こうなったからには、一緒にいる理由もないもの」
「でも、なにかワケがあるのよ。きっと打つ手はあるわよ」
「もう、決めたの。それにいまは、お父さんの様子を見に行かなきゃ。」
少したって、ミハルは書斎のドアをノックした。
「お父さん、私よ」しばらく待ってからノブをまわしてみたが、母の言うとおり、鍵がかかっている。「お父さん、大丈夫?」
「誰にも会いたくない」
父の声を聞いた瞬間、ミハルは全身を安堵の思いが駆け抜けた。彼女は木製のドアに額を押しつけた。「お願い、中に入れて。話があるの」