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僕の伴侶は蜷局を巻く
第13章 終章13
結局、前にユウキとコーヒーを飲んだ海岸近くに馬車を止めた。
この砂浜には人は少なかった。親子連れがひと組。親子は母親と二人の幼い男女の子供たちで、彼らが砂の山をつくるそばで、一匹の子犬が熱心に吼えている。
ミハルは馬車を下り、砂浜を見渡す芝生まで下りていった。海風が髪をもてあそぶ。彼女は風に顔を向け、ほてった肌を冷やした。蜷局を巻いて眺めていると、双子とおぼしき男女の子供たちが子犬と一緒に砂浜を駆けまわりはじめた。二人は風に向かって歓声をあげ、小枝をほうり投げては、犬に拾わせている。母親が遠くへいかないように、と声をかけた。
ユウキはきっと男の子が欲しかったに違いない、とミハルは思った。きっと、ハンサムな子供で背も伸びるであろう。黒い瞳をした外見は人間と同じで、性格は…私のように短気かもしれない。
幼い子供たちのつくる城は、なかなか立派なものだった。バケツの砂を引っくり返してつくった砦のほか、ほりまで掘っている。もし彼の子がいたら軍略の才を引き継ぐのだろうか。
ミハルは悲しい笑みを浮かべ、視線を海に戻した。すると、何かの動きが目に留まった。あれは? 木の枝? 何かが宙を低く飛び、泡立つうねりの中に着水した。続いて、幼い飼い主のために獲物を取り戻すべく、引いていく波の中に子犬が飛び込んだ。小枝は波に運ばれ、どんどん遠ざかっていく。少年は波打際に立って、子犬に向かって、戻ってくるように叫んでいる。だが、幼い声は風にかき消され、子犬はみるみる沖へと流されて、波の向こうに姿を消した。
この砂浜には人は少なかった。親子連れがひと組。親子は母親と二人の幼い男女の子供たちで、彼らが砂の山をつくるそばで、一匹の子犬が熱心に吼えている。
ミハルは馬車を下り、砂浜を見渡す芝生まで下りていった。海風が髪をもてあそぶ。彼女は風に顔を向け、ほてった肌を冷やした。蜷局を巻いて眺めていると、双子とおぼしき男女の子供たちが子犬と一緒に砂浜を駆けまわりはじめた。二人は風に向かって歓声をあげ、小枝をほうり投げては、犬に拾わせている。母親が遠くへいかないように、と声をかけた。
ユウキはきっと男の子が欲しかったに違いない、とミハルは思った。きっと、ハンサムな子供で背も伸びるであろう。黒い瞳をした外見は人間と同じで、性格は…私のように短気かもしれない。
幼い子供たちのつくる城は、なかなか立派なものだった。バケツの砂を引っくり返してつくった砦のほか、ほりまで掘っている。もし彼の子がいたら軍略の才を引き継ぐのだろうか。
ミハルは悲しい笑みを浮かべ、視線を海に戻した。すると、何かの動きが目に留まった。あれは? 木の枝? 何かが宙を低く飛び、泡立つうねりの中に着水した。続いて、幼い飼い主のために獲物を取り戻すべく、引いていく波の中に子犬が飛び込んだ。小枝は波に運ばれ、どんどん遠ざかっていく。少年は波打際に立って、子犬に向かって、戻ってくるように叫んでいる。だが、幼い声は風にかき消され、子犬はみるみる沖へと流されて、波の向こうに姿を消した。