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僕の伴侶は蜷局を巻く
第13章 終章13
次の波を待って、ミハルは波の下にもぐった。波に逆らわず、波にのったほうが、チャンスはある。でも、海水の中で目を開けることはできない。水面に浮上し、あたりを見まわす。色でもなんでも、少年の所在を示すものを探す。
あれか?、と思った瞬間、またしても激しい波に襲われた。砂まみれの水の中に引き込まれる。

肺が破れそうになり、ミハルは水面に顔を出した。それから、先ほどの何かが波に運ばれそうな位置に見当をつけて、ふたたびもぐった。何かが手に触れる。人の肌? ありったけの力でそれをつかみ、ミハルは大急ぎで水面を目指した。ぐったりした少年の重みがミハルの肩にずっしりとのしかかった。どうして岸にまで戻ればいいの? 急がなければ、この子が間に合わない。というより、岸まで戻れない…。濡れた少年の服が重い。バランスがとれず、もう這うことができない。

ミハルは少年の首を抱え、途方にくれた。腕がヒリヒリと痛む。

近くで水をかく気配がし、ミハルはぞっとした。まさか、鮫? 神様…。もう祈るしかなかった。彼女には神に降臨するよう頭の中で頼み込み、少年を強く抱きしめ、目をギュッと閉じるしかない。
「ミハル!」
ユウキ!? どうして彼がここに? さっぱりわけがわからないが、とにかく誰かに出会ってこれほどうれしい思いをしたのは初めてだ。
「この子を」ミハルはあえぎ、空いてるほうの手でいまも必死に水をかきながら、うねる波の上になんとか顔をだしていようともがいた。「息してない。岸まで…」
「僕が連れていく」ユウキは宣言し、彼女の大切な重荷をあずかった。「僕が戻るまで絶対、耐えろよ」

ミハルはうなずいた。「行って」彼女は口の中の塩水を吐き出した。
「すぐ戻る!」大声で告げるなり、ユウキはぐんぐん離れていった。
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