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僕の伴侶は蜷局を巻く
第3章 3-婚約披露-
ユウキは彼女の目の前まで迫った。ミハルは危険を感じた。しかし彼女に向かってのびた手は、ふいに優しさを帯びた。彼は指先でミハルの頬に触れ、その指を顎まですべらせて、彼女の顔を上に向けた。もう一方に手が、彼女のうなじを包み込む。
「無理強いなどしない」ユウキは囁き、さらに顔を近づけた。「だが、納得してもらう」

ミハルは息をすることも、返事をすることもままならなかった。ゆっくりとうなじを撫で、眩暈を誘う。彼女はややふらつき、頭痛はどこかに消えてしまった。ユウキの顔が間近に迫り、理性が飛びそうになる。
「君は震えている」ユウキが指摘した。
「寒いの。体温調節が苦手なのっ!」ミハルは誤魔化した。
ユウキは彼女を引き寄せ、まず一方の頬に、続いてもう一方の頬に唇を押し当てたのち、身体を引いた。
「楽しみだよ」彼はそっと囁いた。「君を温めてあげることも」

ミハルはとっさに顔を背けた。息が苦しく、眩暈がする。
「まだ何か、婚前契約に含めることがあれば…」一、二秒ほど待って、ユウキは続けた。「なしっ…だね。では当日に」

ユウキが背を向け、上着の裾をマントのようになびかせて去っていく間も、ミハルの呼吸は荒く、心臓は激しく胸をたたいていた。彼に触れられた部分がいまもうずき、全身の神経が波立っている。

それぞれの生活を送るはずが、このありさまだ。このままでは、私の落ち着く先は彼のベッドだと、ものの五分で〝納得〟しちゃうわ。

対策を練り直さないと。彼は勝ったつもりでしょうけど、闘いはまだまだこれから。

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