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僕の伴侶は蜷局を巻く
第4章 4-結婚式-
進みはじめた二人を、ミハルの母ハーリーが引きとめ、娘をきつく抱きしめた。喜びの涙に頬を濡らしたハーリーは、続いて新しい息子に挨拶のキスをした。
母上(ハーリー)は本当の母上だ。毘沙門王は養子を認めなかった、人間の僕がカーストに入ることも。そして、母上の命と引き換えに僕を家であずかる使い魔にすることを承諾した。毘沙門王の目の前で母上(ハーリー)はドスを腹に突き刺した…。命の灯が消えなければ鬼はキズを癒せるが死ぬところを間一髪で助かることができたのは介錯人が止めたからだ。配下の妻に腹を切らせる外道はあのときから許せなかったが、母に鬼子母神と称して自分の行いを正当化しやがった。海で亡くなった母さん(実母)の功績でシュードラになったが、僕はカーストなど--
「二人の晴れ姿を、シュラにも見せることができたなら」母上の言葉で花嫁を忘れてしまっていた…。

母の言葉に、ミハルは唇を噛んだ。兄さんは、この屈辱を目にしなくてすんだわ。父バサラが静かに祝いの言葉を添える。長い通路をゆっくりと進む間も、二人はたえず、親族や友人達に呼びとめられた。いずれも新婦側の列席者だった。

新郎側の席は、政府軍と報道陣で占められている。

ユウキの親戚とプライベートな友人はいないのかしら?

ミハルは驚いた。彼の父は関ヶ原で戦死なのは以前聞いた。母は私が産まれる前に亡くなったと聞いた。

教会の外に踏み出すと、まぶしい午後の日差しが待ち受けていた。二人はそこで、長い時間、写真撮影の嵐だった。
「笑って」

カメラマンたちには顔に笑みを貼りつけた。私の役目であり、人生最高の日、ということになっている。金剛家で予定されている披露宴に向かう前に、公式のカメラマンが最後の一枚をリクエストした。ユウキが後ろに立ち、ミハルの腰に両腕をまわすポーズだという。髪に降りかかる吐息を必死で無視した。彼はミハルの髪に口を押し当て、鼻で深く息を吸い込んだ。
「いい香りだ」

ミハルは息がつまりそうだった。熱が全身を駆けめぐる。

カメラマンが終了の合図を送った。
「放しなさいッ」彼女は訴えた。「終わったんだから」
「ふっ」苦笑し、腕の力を抜いた。「まだだ、まだ終わらんよ」



「すぐに出かける。準備したまえ」
耳元でささやかれ、ミハルは驚いた。彼女はそれまで話していた人々の輪を離れ、ユウキの後を追った。
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