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僕の伴侶は蜷局を巻く
第7章 7
ミハルの気の進まない思いが、顔にも表れたんだろう。キキはなおも主張した。
「アナタは奥様なんですよ。お仕事よりも、奥様が大事です。書斎に迎えに行ってくださいませ」
ミハルは感謝の笑みを返し、雑誌をもとに戻した。これが普通の結婚と違うことは、キキも恐らく知っているはずだ。
開いていた書斎のドアを、ミハルはおずおずとノックした。ユウキは椅子に背をあずけ、受話器に向かって早口にまくしたてている。ノックに気づいて、彼は中へ入るよう合図した。腕時計を指さし、指を五本立てている。ミハルは止めていた息をほっと吐き出した。キキの言うとおりだ。書斎の前で不安がる必要などなかった。私には、ここにいる権利があるのだから。
デスクの正面には、黒髪の女性を描いた肖像画がかかっている。ミハルはすぐに、絵の女性と彼の類似点に気づいた。意志の強そうな顔立ちといい、目の輝きが示す強烈な個性といい、そっくりだ。ユウキの母に違いない。ユウキの端正な顔立ちは、けっして偶然ではないんだわ。
ミハルは目をしばたたき、ユウキを振り返った。彼もこちらを見ている。彼の言葉からして、電話は終わりつつあるようだ。
「…奴らから徴発した金で国産のアサルトライフルを作るんだ。日本男児の体格を追求し、設計した銃だ」
相手に告げるなり、彼は受話器を置いた。
「アナタは奥様なんですよ。お仕事よりも、奥様が大事です。書斎に迎えに行ってくださいませ」
ミハルは感謝の笑みを返し、雑誌をもとに戻した。これが普通の結婚と違うことは、キキも恐らく知っているはずだ。
開いていた書斎のドアを、ミハルはおずおずとノックした。ユウキは椅子に背をあずけ、受話器に向かって早口にまくしたてている。ノックに気づいて、彼は中へ入るよう合図した。腕時計を指さし、指を五本立てている。ミハルは止めていた息をほっと吐き出した。キキの言うとおりだ。書斎の前で不安がる必要などなかった。私には、ここにいる権利があるのだから。
デスクの正面には、黒髪の女性を描いた肖像画がかかっている。ミハルはすぐに、絵の女性と彼の類似点に気づいた。意志の強そうな顔立ちといい、目の輝きが示す強烈な個性といい、そっくりだ。ユウキの母に違いない。ユウキの端正な顔立ちは、けっして偶然ではないんだわ。
ミハルは目をしばたたき、ユウキを振り返った。彼もこちらを見ている。彼の言葉からして、電話は終わりつつあるようだ。
「…奴らから徴発した金で国産のアサルトライフルを作るんだ。日本男児の体格を追求し、設計した銃だ」
相手に告げるなり、彼は受話器を置いた。