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僕の伴侶は蜷局を巻く
第7章 7
「行こうか」ユウキはデスクをまわり、近づいてきた。「待たせたな」
「いいのよ」ユウキは彼女の肩を軽くつかみ、それから手を握った。「さあ、天気が悪くなるよ」
外ではすでに少し強い風が吹きつけ、いまにも足をすくわれそうになる。ユウキは丘の小道を下り、海岸を目指した。空は灰色の雲に覆われ、湿気を帯びた空気が、雨が近づくのを予感させた。
ユウキが振り返り、風と波の音に負けじと声を張り上げた。「寒くないか?」
ミハルはかぶりを振り、髪が顔にたたきつけるのもかまわず、笑って答えた。「大丈夫。いい気持ちだわ」
ユウキの表情がやわらぎ、笑顔になった。「それじゃ、おいで」
二人は会話は少ないものの一緒に貝殻を拾いながら、岬から小さな湾に向かって、荒涼とした海岸を歩きつづけた。小さな岩を乗り越える際にユウキが手を貸してくれたあと、ミハルの手はなんとなく、そのまま彼の温かい手の中におさまっている。
なんて奇妙な感じかしら、とミハルは思った。この私がユウキと仲むつまじく歩いているなんて。この世で最も憎んでいる相手のはずなのに。ミハルはちらりと彼を見上げた。でも、本当に? この三日間というもの、彼は申し分のない態度で私の相手をして、要望も叶えてくれた。荷物も一緒に取りに行かせてくれた。愛馬のパラディンも売らずにすんだのも思い出した。数々の思い出の品は今までどおり自宅に残っている。
そしていま、私たちは手に手を取って歩いている。そう、最近では彼に対して憎しみというより……むしろ魅力を感じている。彼の目を見ると…違う、彼が私を見て、目に炎がゆらめくさまがいい……。
「いいのよ」ユウキは彼女の肩を軽くつかみ、それから手を握った。「さあ、天気が悪くなるよ」
外ではすでに少し強い風が吹きつけ、いまにも足をすくわれそうになる。ユウキは丘の小道を下り、海岸を目指した。空は灰色の雲に覆われ、湿気を帯びた空気が、雨が近づくのを予感させた。
ユウキが振り返り、風と波の音に負けじと声を張り上げた。「寒くないか?」
ミハルはかぶりを振り、髪が顔にたたきつけるのもかまわず、笑って答えた。「大丈夫。いい気持ちだわ」
ユウキの表情がやわらぎ、笑顔になった。「それじゃ、おいで」
二人は会話は少ないものの一緒に貝殻を拾いながら、岬から小さな湾に向かって、荒涼とした海岸を歩きつづけた。小さな岩を乗り越える際にユウキが手を貸してくれたあと、ミハルの手はなんとなく、そのまま彼の温かい手の中におさまっている。
なんて奇妙な感じかしら、とミハルは思った。この私がユウキと仲むつまじく歩いているなんて。この世で最も憎んでいる相手のはずなのに。ミハルはちらりと彼を見上げた。でも、本当に? この三日間というもの、彼は申し分のない態度で私の相手をして、要望も叶えてくれた。荷物も一緒に取りに行かせてくれた。愛馬のパラディンも売らずにすんだのも思い出した。数々の思い出の品は今までどおり自宅に残っている。
そしていま、私たちは手に手を取って歩いている。そう、最近では彼に対して憎しみというより……むしろ魅力を感じている。彼の目を見ると…違う、彼が私を見て、目に炎がゆらめくさまがいい……。