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僕の伴侶は蜷局を巻く
第1章 Tutorial~プロローグ
「実際、青年時代はここでアナタとシュラと一緒に過ごしたからね」ハーリーは自分の子のように喜ぶように称え、弱々しく微笑んだ。「彼だって、長所はあるわ。私が育て、学校に行かせたのだから」
ミハルは、フンッと鼻を鳴らした。「だとしたら、上手な隠ぺい工作ね」
「おまけにお父さんより、男前だわ」
「華奢な人間好きにはね」ミハルは眉をひそめた。母は何が言いたいのだろう?「いずれにしても、相手は政府の犬と化した石田勇樹なのよ。幼少期は母親と一緒に物乞いだったのを我が家に救ってもらったというのに、兄を殺した挙句にどのツラで…」
「亡くなった彼の母を二度と侮辱してはいけません。次に彼の母を侮辱するなら…」ミハルの発した言葉にハーリーは槍を突き刺すよう強引に止めた。一瞬で母から大粒の涙があふれ出る。
「ミハル」ドア越しの背後から父バサラの声が響いた。「まだ起きていたのか? 助かった。一、二分、つき合って、もらえないか」
ミハルはホッした。父が出てきたのなら、ユウキは帰ったに違いないし、母との険悪な状況を回避できた。
「行きなさい」目をタオルで覆うハーリーはドアを示し、娘に促す。
ミハルは泣く母の姿が父に見えないよう最小限でドアを開け、父のあとについて這う。
かつて毘沙門王に仕えた時代の父は炎のような力強いオーラを発していた。金剛力士とまで呼ばれた巨躯も、今ではその名残もない。
「いったい何をしようというの?」父の沈黙に不安を隠せなかったミハルは尋ねた。「ユウキの要求は何だったの?」
バサラは書斎の前で立ち止まり、振り返って娘の両手を握った。父の目の下にできた隈に気づいて、ミハルは愕然となった。一家の置かれている状況からくるストレスは、父をも蝕んでいたのだ。書斎の中から、古い大時計が時を刻む音が不気味に響いてくる。
「ミハル」バサラは書斎に入り机の方から自分に振り向く娘に告げた。「この先に進む前にこれだけはわかってくれ。イザナミ神から授かったお前を、例え鬼神の眷属が嫁にほしいと言っても渡す気はない。父を信じてくれ」
必死の眼差しからは、父の絶望がひしひしと伝わってくる。父の冷たい手を感じたミハルの方が動揺した。
ミハルは、フンッと鼻を鳴らした。「だとしたら、上手な隠ぺい工作ね」
「おまけにお父さんより、男前だわ」
「華奢な人間好きにはね」ミハルは眉をひそめた。母は何が言いたいのだろう?「いずれにしても、相手は政府の犬と化した石田勇樹なのよ。幼少期は母親と一緒に物乞いだったのを我が家に救ってもらったというのに、兄を殺した挙句にどのツラで…」
「亡くなった彼の母を二度と侮辱してはいけません。次に彼の母を侮辱するなら…」ミハルの発した言葉にハーリーは槍を突き刺すよう強引に止めた。一瞬で母から大粒の涙があふれ出る。
「ミハル」ドア越しの背後から父バサラの声が響いた。「まだ起きていたのか? 助かった。一、二分、つき合って、もらえないか」
ミハルはホッした。父が出てきたのなら、ユウキは帰ったに違いないし、母との険悪な状況を回避できた。
「行きなさい」目をタオルで覆うハーリーはドアを示し、娘に促す。
ミハルは泣く母の姿が父に見えないよう最小限でドアを開け、父のあとについて這う。
かつて毘沙門王に仕えた時代の父は炎のような力強いオーラを発していた。金剛力士とまで呼ばれた巨躯も、今ではその名残もない。
「いったい何をしようというの?」父の沈黙に不安を隠せなかったミハルは尋ねた。「ユウキの要求は何だったの?」
バサラは書斎の前で立ち止まり、振り返って娘の両手を握った。父の目の下にできた隈に気づいて、ミハルは愕然となった。一家の置かれている状況からくるストレスは、父をも蝕んでいたのだ。書斎の中から、古い大時計が時を刻む音が不気味に響いてくる。
「ミハル」バサラは書斎に入り机の方から自分に振り向く娘に告げた。「この先に進む前にこれだけはわかってくれ。イザナミ神から授かったお前を、例え鬼神の眷属が嫁にほしいと言っても渡す気はない。父を信じてくれ」
必死の眼差しからは、父の絶望がひしひしと伝わってくる。父の冷たい手を感じたミハルの方が動揺した。