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僕の伴侶は蜷局を巻く
第7章 7
「しばらくここで海を眺めていたいわ。お日様が出ている間にね。コーヒーはあとでも飲めるから」
ユウキは両手をポケットに入れ、眉間にしわを寄せて、海を見やった。ミハルは一瞬、彼がいますぐ喫茶店に行くと言い張るだろうと思った。彼はミハルの主張を受け入れたのだ。
ミハルは砂の上に蜷局を巻いた。集めた貝殻を浜に置いた。
「本当にきれいな海岸ね。とても穏やかだわ」
「穏やかなのは見かけだけだぞ。ここの波は恐ろしい。特に、この時期はな」
そういえば、遊泳者に引き波を警告する看板が立っていた。「そんな風には見えないけど」寄せる波のリズムが、気持ちをなだめてくれる。「岬と比べてこんなに穏やかで、とても同じ日とは思えないくらい」
「僕の母もここが好きだった。嵐でも海によく来ていた」
ミハルは驚いて振り返った。自分から母親の話をするなんて。
「お母さんは、さぞ気に入っていたでしょうね。きれいなところですもの」
ユウキはじっとミハルを見つめた。その目はうつろで、底知れぬ深さをたたえている。やがて彼が発した声も、はるか地底から聞こえてくるようにミハルには思えた。
「母は荒れた天気のほうが好きだった。風に乗って、父の語りかける声が聞こえてくると言っていた」
ユウキは両手をポケットに入れ、眉間にしわを寄せて、海を見やった。ミハルは一瞬、彼がいますぐ喫茶店に行くと言い張るだろうと思った。彼はミハルの主張を受け入れたのだ。
ミハルは砂の上に蜷局を巻いた。集めた貝殻を浜に置いた。
「本当にきれいな海岸ね。とても穏やかだわ」
「穏やかなのは見かけだけだぞ。ここの波は恐ろしい。特に、この時期はな」
そういえば、遊泳者に引き波を警告する看板が立っていた。「そんな風には見えないけど」寄せる波のリズムが、気持ちをなだめてくれる。「岬と比べてこんなに穏やかで、とても同じ日とは思えないくらい」
「僕の母もここが好きだった。嵐でも海によく来ていた」
ミハルは驚いて振り返った。自分から母親の話をするなんて。
「お母さんは、さぞ気に入っていたでしょうね。きれいなところですもの」
ユウキはじっとミハルを見つめた。その目はうつろで、底知れぬ深さをたたえている。やがて彼が発した声も、はるか地底から聞こえてくるようにミハルには思えた。
「母は荒れた天気のほうが好きだった。風に乗って、父の語りかける声が聞こえてくると言っていた」