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僕の伴侶は蜷局を巻く
第7章 7
「お母さんは、再婚なさらなかったの?」

ユウキはうなずき、水平線を見やった。「僕は見ぬ父が嫌いだった。死んでも愛する女を守らなかった親父を憎んださ。僕は思春期ながらも母には幸せになってほしかったんだけど…生まれ変わっても父と一緒になると言い張っていたよ」
「よほど愛し合っていたのね」ミハルはぬくもりを感じながら海のほうへ視線を向けた。

ユウキは少しだけ彼女を強く抱擁した。「聞いたんだ。僕は、お母さんを悲しませた男を認めないと。そしたら、母は僕を愛しているからだと言った。もう一度、親父と一緒にならないと…〝あの人じゃないとユウキが産まれてこないでしょ?〟と言っていたよ。理由は愛ではないのさ」彼女の耳に、ユウキの言葉がよみがえった。
「おとぎ話を否定するわけがわかったわ」
「いきなり何の話だ?」彼は彼女の頭を撫ではじめた。
「ハッピーエンドは信じない、とアナタは言ったでしょう? ご両親にハッピーエンドがなかったから信じていないのね」
「ふふっ、君は心理学を専攻すべきだったな」
「心理学じゃなく女の勘よ。ご両親がともに過ごした時間が断ち斬られたので、苦々しく思っているのでしょう?」
「いいや、そうは思わん」
「だって、好きな人と幸せに結婚して、ともに生きた。私の両親も何十年も一緒にいるのよ、ハッピーエンドじゃない?」
「母上は…幸せにしてみせる。僕の母には、おとぎ話のような結末はなかった」
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