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僕の伴侶は蜷局を巻く
第9章 9
ところがその後、ミハルは急にバスルームに閉じこもり、出てきたときにはすっかり別人になっていたのだ。女神ラミアは忽然と姿を消し、かわりに出てきた生意気な雌蛇は、愛の行為よりも火花を散らすほうが好きと見える。

ユウキはハンドルに手をたたきつけた。しかし隣に座っているサファイアブルーの目をした雌蛇は、ほとんど気にも留めず、かたくなに窓の外を眺めている。

高級車はエンジン音を響かせる。見慣れない背景を進んだところで、ミハルはようやく口を開いた。
「どこへ行く気?」
「陸軍の官舎さ」
「私はてっきり…」

ミハルが言いよどむのを見て、ユウキはニヤリと笑った。
「てっきり旭(実家)で降ろしてもらえるんじゃないかって? 君は僕の妻なのだから僕と暮らすんだよ」
「だって、アナタは仕事でしょう? その間、私は何をするのよ?」
「奥様とは思えない言葉だな…官舎になれればいいだろ」
「その官舎がどこにあるかも知らないのよ。不安だわ」
「鉾田だ。もうすぐ着く」
「荷物はどうすんのよ?」ミハルは彼をちらりと見た。「まさか、閉じこもっていろって言うの!?」
「ちゃんとキキが馬車で持ってくるよう手配をしてある。官舎は軍事施設ではないからな。パラディンと好きなように出かければいいさ」
「…ふんっ、流石ね」

ミハルは目をくるりとまわし、窓の外に注意を戻した。


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