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half. ~Sweet blood~
第8章 難航、その先に…
車のドアを勢い良く開けたのは昂だった。でもその腕を掴み止める。何でか咄嗟に動いてしまっていたんだ…止めるつもりなんか無かったのに。
「お前達は会って何がしてやれる?考えてみろよ、おかしいだろ。会わせられないから嘘付いんだって、どんなふうかは知らねーけど普通な訳ないだろ」
「それでもっ…っ…達希に会わなきゃいけない。なんの為に何年も探してきたんだよ」
「それって自分が楽になりたいからだろ?今更じゃねーの?」
「分かったように言うな、ルシアには人の気持ちなんて分かんねーだろっ」
興奮気味に昂が叫んだ。
《人の気持ちなんて分かんねーだろ》あぁ、分かんねーよ。分かりたくもねーからな。
あっそ…と言わんばかりに掴んだ手を離せば、変わりに雪斗が昂の手を掴んだ。
「昂…謝れ」
「っ…何でだよ。ユキは会いたくねーのか」
「違う。よく考えて動かなきゃ駄目だ。それに…ルシアの言ってる事は間違ってねーよ。今俺たちがしてんのは…エゴでしかねーよ…」
「っ…何で…何でだよ。目の前に居るんだぞ?」
普段から柔らかい笑みをこぼし、怒鳴った事なんて無かったのに…涙を浮かべる昂は、歯を食いしばり震えていた。
「昂…ルシアに謝れ」
「ごめ、ん…ルシア…」
なだめるように肩に手を置く雪斗の表情もまた、悲しげだった…
波の音と共に昂がすすり泣く。
潮風が車内を包み、一気に冷える…
それは熱くなった頭を冷やすかのように。
「ごめん」何度も呟く言葉…
それは俺に対してではなくタツキに言っているように聞こえた。