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half. ~Sweet blood~
第8章 難航、その先に…
目の前まで来ると足を止めジッと見つめる。
「た、達希…」
「僕は此処でしか生きて行けないんです。邪魔しないで下さい…貴方たちなんて知りませんから」
「達希…助けて欲しければ言え。俺たちが絶対助けてやるから」
雪斗の元へと足を進める。何の疑いも無く手を差し出す雪斗の胸に、ドサっと顔を埋めた…
「た…つき…?」
「ユキちゃん…僕もう戻れないんだ。ごめんね…此処が居場所なんだ」
表情なんて見えなかった…ただ達希の喋り方は昔のままで《ユキちゃん》と言われたのが懐かしく感じたのは覚えている。
「しあ…わせか…?」
「うん。僕にはご主人様が必要なんだ」
「…そっ、か…なら…しょーがねーな。っ…昔…助けてやれなくて悪かった…な」
「そんな事もう忘れたよ…ユキちゃんサヨナラ…ごめんね…」
1分程度の会話…それはとても短かった、なのに一緒にいた日々を一気に思い出させ…長く感じた。
今でも忘れない《ユキちゃん》達希の穏やかな口調で呼ばれた日々を…
「……なんだ…」
離れ際に達希は言った。俺は優しく達希の肩を離し白瀬の元に戻るように促す。そらが達希にとって良いことなのかは分からない…けど、こうしてまで選んだ相手だ…
雪斗から離れ白瀬の元に戻っていく達希を眺めた。端から見れば決して幸せとは程遠いものなに、達希の背中を見ていたらそれでもいいと感じたんだ…それが達希の選んだ道ならば…
「っ昂…行く…ぞ…」
振り返った瞬間ルシアと目が合った…
あいつ、笑ってやがる。
あぁ…そっか…匂いがするんだな…