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half. ~Sweet blood~
第9章 生き方と、別れ…
車から見える景色にも何も感じない。
風が吹いたって、雨が降ったて…それは全て関係の無いこと。人として生きている実感なんて沸いてこないんだ。
そんな時俺はこの人に買われた。
こんな俺に億単位の金を出し、きっと飽きたら、要らなくなったら捨てられるんだろーな。
「今日から私が君の家族になる」
「っ…え…家族…」
洋風の大きな屋敷に連れてこられた。白い外観に合う真っ赤なバラが周囲を囲む。丁寧に手入れされた庭にはテーブルが置かれ、外国の映画のカットを思い浮かべた…
数人のメイドと執事が出迎える。俺専用の部屋が用意されており、室内には風呂やトイレは完備されていた。空調設備も整っており、一見高級ホテルにしか思えない。
「何でも言いなさい。悪いようにはしないよ」
白瀬はベットの縁に腰掛け微笑む。まるで紳士のような身の振り方に、身構えていた体の力を抜いた。
「白瀬さん…俺をどうするんですか」
恐る恐る聞いてみた。
機嫌を損ねないように慎重に…
「息子になってもらいたいかな」
拍子抜けだ。
息子って…
「私には子供がいないんだよ。妻もいない。でもいつか自分の息子と暮らしたいってのが夢だったんだ…そんな時に富豪仲間に声をかけられてね、興味は無かったんだが…付き合いで行った。そこで君を見つけたんだ」
とても爽やかに微笑む…まだ年ではないけれど目尻に浮かんだ皺が何とも言えない哀愁を漂わせた。
「お互いの事はこれからゆっくり知っていこう、な?達希君」
頭に置かれた手はとても暖かかった。
味わった事がない気持ちで思わず涙が溢れた…そんな俺をみて白瀬さんは言うんだ。
「素直でいいこだ」って。