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half. ~Sweet blood~
第10章 偽りと、確かな気持ち…
施設に入る前、俺は両親と妹の4人で小さなアパートに暮らしてたんだ。母さんは妹が大好きでいつも可愛がってた。妹は母さんそっくりでね…瞳も髪も綺麗な黒色だったんだ。
「ルシア見てて…」
「綺麗な茶色だな」
眼球に張り付いた黒いレンズ。
それを外せば写真の髪同様、綺麗な茶色。
妹が死んだんだ。交通事故だったんだけどね…まだ幼稚園だった俺は、なんの事だかさっぱり分かんなかった。でも皆泣いてたんだよね…妹の写真の前でさ。
父さんは、母さんを支える為に頑張ってたよ。家事しながら仕事もして、俺の面倒も良く見ててくれ。
母さんが俺に向かって言ったんだ。
「桜チャンおいで」って、どう見たって俺は妹に似てないんだから間違う意味が分かんないだろ?でも頻繁に妹の名前で呼ぶようになった。
どんなに父さんが違うって説得したって聞かないんだよ。そのうち俺の名前は呼ばれなくなって、しまいには居ない事になってたな…。
「ほら、俺どうみたって男だろ?」
「そーだな、まぁ綺麗ななりだけど」
三人で写る写真を眺めながら。消え入りそうな声で昂は呟いた…「なんでかな」って。