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half. ~Sweet blood~
第10章 偽りと、確かな気持ち…
そんな母さんを心配してた父さんは、母方の実家に帰るように言ってた。俺が昂の面倒見るからって…でも母さんは「うちには桜しかいないから」って。もう何も分からない子供なりにショックだったな…
ジィチャンとバァチャンが母さん連れて帰ったんだけど、次は父さんがおかしくなっちゃってさ…そうだよね、娘死んだ後に嫁まで居なくなって、辛かっただろうと思うよ。
だんだん父さんも俺を見なくなっちゃって、育児放棄って市が判断したから施設に入る事になったんだ。でも俺はね、両親を憎んでないし悲しい訳でもないんだ…
「こうしてたら、可愛がってくれるから」
外したレンズを戻し、綺麗な茶色は澄んだ黒へと変わる。
髪だって切らずに伸ばしてさ…妹みたいに黒くしてるんだ。今は母さん病気でずっと入院してるからね、少しでも喜ばせてあげたくて妹のフリして見舞いに行ってる。父さんは何処にいるか分かんないけど…
「母さんは俺なんて見てない、妹がいればそれで幸せなんだか。それなら母さんが死ぬまで俺は妹のフリでも構わないんだ」
「それで昂が納得してんならいいんじゃね」
俺は妹と共存して生きていくんだ。
母さんの為に。
「で、母親死んだらどーすんだよ」
「え?」
「もう偽んなくていいんだろ」
母さんが死んだ後、そんな事考えた事もなかった。母さんが死んだらもう妹じゃなくてもいい…昂に戻ってもいいのか?でもそんな事したら、妹の事を忘れるみたいで…
「どーでもいいけど、自分が無いってのもどーかと思うぞ」
俺は…どうしたいんだ。
本当は辛かったし、悲しかった。それ以上に母さんも父さんも辛いって分かってた。俺は「昂」って呼んで欲しかったんだ。
「母親死んだら、もう誰も妹として見ねーよ。で、戻したって誰も責めねーんじゃね」
あぁ、そうか…周りは俺を妹としてじゃなく、俺として見ていてくれてる。辛かったのは妹じゃなきゃ価値がないと思い偽っていたから…。
「ルシア、さすが年の功だな」
「馬鹿にしてんだろ」
「いや、救われた気がするよ」
「気持ちわりーな」
人んちにも関わらず、図々しくソファの真ん中に座り、ゲームを今か今かと待ちわびている。そんなルシアは実は案外大人なのかもしれない…