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half. ~Sweet blood~
第10章 偽りと、確かな気持ち…
「じゃ、俺仕事行くわ。冷蔵庫の中勝手に食べててくれていいから、なんかあれば携帯連絡しなよ」
「ん…」
晴れた空に、ピンクの桜が映える。児童たちはブルーシートに座り大きな重箱を広げ、笑みをこぼした。
4月、少し暖かくなった外には親子連れが目立つ。
「ユキたーん、あとで隠れんぼね」
「あぁ、沢山食べたらしよーな」
児童たちは季節事のイベントを心待ちにしている。期待外れにならないよう、先生は必死に計画を練り準備をしてくる。子供の笑顔が一番だから…
「久しぶりね、ユキチャン」
「何週間も休ませてもらってスミマセンでした」
「いいの、達希に会えたんでしょ」
「はい」
「そう、良かった」
柔らかな表情、それはまさしく母親の顔そのものだった。
「昂…ルシアどーしてる」
「んー、ずっとゲームしてた。寝てなかったみたいだけど」
「そっか、押しつけて悪いな」
「ねぇ、ユキが中途半端なのってルシア可哀想。俺がもらっちゃってもいーい?」
「は?」
「ルシア…可愛いからな。欲しくなっちゃった」
その顔は冗談なんて言っていない。真っ直ぐ俺を見据える瞳は綺麗な茶色、黒い瞳ではなかった…
風が吹き桜が舞い散る。
周りの騒がしさなんか耳に入らず、昂の言葉だけが鮮明に聞こえたんだ…
「ルシア、俺の血でもいいみたいだし。男には見えない位可愛いからさ」
「ってにしろ…」
「ん?なに?」
「勝手にしろ」
「ふっ…じゃぁ遠慮なく」
素直じゃないな。でもユキが自ら手放したんだから、ルシア次第では俺がルシアの主になる事だってあるんだぞ。
「っ…昂」
「何?」
「いや、何でも…ない」