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銀の木洩れ日亭へようこそ
第1章 君を拾う

ふんわりとした肩までのミルクティー色の髪。
大きな深紅の瞳。
記憶にない女だった。
おそらく自分よりも年下の…少女と言ってもいい年頃の目の前の女は、乳鉢を抱え植物を丁寧にすり潰しているところだった。
髪と同じ色のふさふさとした睫毛を瞬かせ、それを手にしたままジークの傍へ寄る。
より濃く警戒の色を見せられることに頓着せず、彼女は小さな手でそっとジークの額に触れた。
「…まだずいぶん熱がある。動かないほうがいい」
ひんやりとした掌が、触れた時と同じように静かに離れていく。
ジークは強い戸惑いを覚えながらも、その一方でほんの少し名残惜しさも抱いた。
少女は元居た椅子に腰掛け、また乳鉢を抱えた。カチカチと乳棒を回しながら鼻歌を小さく奏で始める。
さっきの音楽はこれだったんだ。
初めて聴くのにどこか懐かしい、温かみのあるメロディーに、ジークは黒く縮こまった自分の心が氷解していくのを感じていた。
大きな深紅の瞳。
記憶にない女だった。
おそらく自分よりも年下の…少女と言ってもいい年頃の目の前の女は、乳鉢を抱え植物を丁寧にすり潰しているところだった。
髪と同じ色のふさふさとした睫毛を瞬かせ、それを手にしたままジークの傍へ寄る。
より濃く警戒の色を見せられることに頓着せず、彼女は小さな手でそっとジークの額に触れた。
「…まだずいぶん熱がある。動かないほうがいい」
ひんやりとした掌が、触れた時と同じように静かに離れていく。
ジークは強い戸惑いを覚えながらも、その一方でほんの少し名残惜しさも抱いた。
少女は元居た椅子に腰掛け、また乳鉢を抱えた。カチカチと乳棒を回しながら鼻歌を小さく奏で始める。
さっきの音楽はこれだったんだ。
初めて聴くのにどこか懐かしい、温かみのあるメロディーに、ジークは黒く縮こまった自分の心が氷解していくのを感じていた。

