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可愛いヒモの育て方。
第8章 芽生え
「――男ってさ」
ぼやくように呟いた言葉は、なんだか自分の声じゃないみたいに遠く聞こえた。
「自分の欲望ばっか優先するじゃん。やりたい時ばっか、わざとらしいくらい優しい」
「……元カレさん?」
「わかんない」
誰がどんなふうに自分に接していたかなんて、いちいち覚えていなかった。思い出す限り、みんなそうだったような気もする。
私は麻人の方に体ごと向けて、薄目を開けた。麻人の手を、恋人繋ぎの時のように握りしめて、そこに頭をくっつける。
昔はよく、彼氏と寝る時こうして眠った。どれだけ一緒にいても連絡を取り合っても、いつも不安で寂しかった。唯一触れ合っている時だけは満たされているような気がして、いつしか、手を握って眠らないとすぐに寝つけなくなった。
相手が代わっても変わらない。好きとか、ずっととか、言葉なんて、少しも役に立たなかった。鎮痛剤程度にしかならない。
だけど、ある程度人数を経験して、一夜限りもしてきて、相手に依存することがどれほど愚かで馬鹿らしいことなのかを学んだ。
毎夜手を握っても、冷めたらお別れなんだよ。――あいつの言う通りだ。