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可愛いヒモの育て方。
第8章 芽生え
「……寂しいから、セックスしたいわけじゃないよ」
誰に向けた言葉なのかもわからなかった。睡魔が頭の中をぐるぐるして、勝手に言葉を運んでいく。本音か嘘か強がりか、どれをどう分類していいのかも、自分じゃわからない。
手のひらが温かい。手のひらから伝わる温もりを感じて眠るのが、とても懐かしいことのように思えた。同時に、長い間忘れていた感覚でもある。
「友梨香さんは天の邪鬼だから、友梨香さんの言葉を全部鵜呑みにはしません」
ふいに、麻人が囁いた。
「……天の邪鬼?」
「どれが本音か、たまにわかんない」
私は苦笑する。麻人がわからないのも無理はない。自分でさえ、時々わからなくなるんだから。
「麻人が優しいって言ったのは、本音だよ」
「そん……の、――ない」
限界のようだった。だんだんと、呂律がまわらなくなる。麻人が何かを返してきたけれど、耳を抜けていった。
私は睡魔に素直に従い、身を預けた。
おやすみなさい。最後にそう聞こえたような気がした。