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~散花~
第16章 疑惑
(これは…)
すぐにはわからなかった。
しかし――
「これはわたしの…」
手を伸ばしながら、玉蘭には解せなかった。
どうして、これがここに?
(厨子の奥にしまっておいたはずなのに…)
玉蘭が触れる寸前、女官長は小袋を跳ねあげた。
「これは何です?」
「それは…わたしの……母がわたしにくれた、御守りです」
玉蘭の声は震えていた。
玉蘭が玲利に連れられて故郷を発った日、痩せ細った手で母が渡してくれた御守り…。
「であろうのう…」と女官長は頷きながら、御守り袋の中身を取り出した。
それはクヌギの小枝と、小さな木片。そこには、
『琳玉蘭に永久の御加護がありますように』
と、小さく文字が刻まれていた。