この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
~散花~
第2章 決意
「旦那様は、もともとは郡衙の主計を務めていらっしゃったのですね」
美女は優雅に母に語りかけた。
「さきほど、玉蘭さんが郷館に残していかれた記録から、いろいろと調べさせてもらいました。病に倒れられた旦那様は、郡衙のお役目を解かれてしまった」
「え、ええ…」
母は、ためらいがちに頷いた。
「徭役を免除されているとはいえ、やはり生活はお苦しいのでは?」
「……」
「もし、玉蘭さんが機織りで得るお給金の10倍のお手当てをいただけるようになれば、お母様も少なからず心穏やかにご子息の将来を待ち望めるようになるのではありませんか? まだ幼いご子息が、いつか旦那様の跡をお継ぎになる日を…」
淀みなく語り、最後に、弟の方へ視線を向けて微笑んだ。
「そ、それは………」
長い沈黙のあと、母は頷いた。