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~散花~
第33章 覚悟
「ああ、そうだ。ちょっと待って」
反物を厨子の上に置いて出ていこうとする女官を、秀瑛は軽く呼び止めた。
「縫殿寮に戻るなら、典侍に渡してほしいものがあるんだ。頼めるかな」
優しく甘い笑顔。
それに釣られて女官が戻ってくる。
「はい、承知いたしました」
秀瑛に歩み寄り両手を差し出す。
秀瑛が左の袂を探っている。
そのとき、なぜか玉蘭はひどい悪寒を背筋に感じた。
秀瑛が袂から出したものは――
「あぅっ……くっ…な…んで…」
女官が息を呑み、口を歪め、青ざめ、涙をひとつ落として秀瑛の足下にくずおれた。