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~散花~
第35章 初夜
ジーーーーーー
螻蛄か蚯蚓か、宵闇に湧く地虫の鳴き声。
葉ずれの音。
どき どき どき どき――――
あとは玉蘭の胸の鼓動。期待と不安が嵐のように騒いでいる。
待ちに待った夜。
かなり遠回りしたけれど、ようやく帝の御目にかかれる。
(男の人の肌…って、どんな感触なんだろう)
玉蘭は手のひらをこすりあわせた。
習った通りにできるかな。
優しく触れてくれるだろうか。
痛かったらどうしよう。
声を上げずに耐えられるかな…。
これまでだって、医師や宦官には、馴れてしまうほどさんざん裸身を弄られてきた。
けれど今夜は――
背の君となる天子さま。
不粋な醜態だけはさらしたくない。がっかりされて、二度と呼ばれなくなったら悲しいもの。
「――!」
不意に、玉蘭は顔を上げた。
ひそやかな足音が近づいてきた。