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~散花~
第48章 散花
「では琳夫人さま。こちらにて帝のお渡りをお待ちくださいませ」
寝所には前回とまったく同じ位置に二帖の畳が置いてあり、そこへ玉蘭は膝を正した。
砂時計を渡される。
「一刻たちましたら、お妃さまはあちらの格子戸からお出になってください。そこに控えの御局が――」
これもまた前回とまったく同じ説明を淀みなく語り終えたあと、
「では、お夜りあそばしませ」
尚侍は一礼した。
格子戸が閉められ、尚侍の足音が遠ざかっていく。
独り残され、玉蘭はぼんやりと燭台の作る影を眺めていた。
初夜の時のような不安も、緊張も、感慨もなく、ただ静かに凪いだ心地で座していた。