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執事とお嬢様の禁断の模様
第2章 同志

「孝博さん、ごめんね遅れちゃって…」

「いいえ、大丈夫ですよ。さぁ、帰りましょう」

「うん。妃奈浬、浅葱さん、菜摘先生、さようなら! また明日」


 沙耶香が私達に手を振る。
 孝博さんは軽く会釈をした。


「うん、また明日ね! 孝博さんもさようなら!」


 私も手を振り返す。


「あら沙耶香さん、九条さん、さようなら」

「さようなら」


 先生と浅葱も軽く手を振る。


 そのうちに、沙耶香と孝博さんは車に乗って帰っていった。

 孝博さんとうまくいくといいね、沙耶香……


 私は浅葱をちらりと見てから、まず先生に話しかけた。


「菜摘先生、こんにちは」

「妃奈浬さん、こんにちは」


 優しい笑顔で挨拶する菜摘先生。

 今日は春らしく、落ち着いた緑のカーディガンにサーモンピンクの
ロングフレアースカートを着用している。
 長めでふわふわの栗毛がなんとも羨ましい。


「今日は大変だったでしょう?」

「いえ、そんな…私が遅刻したのが悪いのですし…」

「フフ、今度からは気をつけてくださいね」

「はい、気をつけます」


 私は浅葱に向かい合って、話しかけた。


「ごめんね浅葱、ずっと待っててくれたの?」

「いえ、最初はここで妃奈浬お嬢様を待っていたのですが、
菜摘先生が声をかけてくださって、今日は一時間ほど遅くなる、
ということでしたので…僭越ながら学園内で少し先生とお話をして、
お嬢様を待っておりました」

「あ……そうだったの」

「はい」


 そう言ってにっこりと笑う浅葱と先生を見て、
私はなんだか複雑な気持ちになった。

 …浅葱……モテるもんね…

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