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第12章 第一部･第三話　【月戀桜～つきこいざくら～】　十六夜の月

　あられもない夢で、他人(ひと)さまに話すのも恥ずかしいような淫らな夢だった。それが二度も手籠めにされたことからくる心理的な傷によるものであることは明らかだ。しかも、一度目は血の繋がらない従弟に乱暴されかけ、二度目は何があっても守ると約束してくれた栄佐に陵辱された。
　信じていた恋人に裏切られた衝撃と哀しみ、絶望はいまだに小紅の心に癒えぬ傷を残していたのだ。しかし、栄佐が深く後悔していることを知る小紅は、彼の前では気丈に何でもないようにふるまっている。