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マネキンなカノジョ
第5章 カノジョとお使い
 
…あの娘…また…誰でもはいはいと………


 携帯を忘れていった事に気付いてから、どうも落ち着かない。

 あの娘にも、ある程度の自制はあると思ってる。

 でも、普段の明日香を見てると、その思いも揺らいでくる。

 出て行ってから二時間以上過ぎていた。

 当然、こっちから連絡する事は出来ない。

 明日香からの連絡も無い。

 周りの席に居る同僚が、心なしか遠ざかっている気がする。

「課長?」

「は、はいぃっ?」

 軽く問い掛けただけなのに、何故か課長は怯える。

 さっき軽く睨んだだけだったはず。

「…社用車は…?」

「出払ってて使えないんだよね。
 だから、橘くんにお使いを……」

「課長は何故、自分で行こうとは…?」

「い、いやぁ…。仕事が立て込んでて……」

「…へえ…」

 腹の底から冷ややかな声が出た。

 課長の体がビクッとしたのを見逃さない。

「あ、いや…あの…ね……」

 課長も薄々勘付いたらしい。

 視線で何か訴えながら、しどろもどろになっている。

 でも知らない。

「アナルっ娘でしたっけ?
 そのサイトを見るのに忙しかったと?」

 途端に、残っていた同僚の侮蔑の視線が課長に向く。

 同時に蒼褪める課長。

 さっきの時に課長のパソコンの画面をチラッと見て、タスクに隠されているのを見逃さなかった。

「あ、いや…その……」

 落ち着かないモヤモヤを課長で晴らしていた時だった。
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