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マネキンなカノジョ
第5章 カノジョとお使い
 
「…はい?」

 車なら三十分もあれば着く、お使い先の会社。

 終業間際に飛び込んで、受付に尋ねた。

「だから、いらしてませんが?」

 困惑の表情を見せる受付の女の娘。

 嘘を吐いている様子は無い。

 吐く理由も無いはず。

「…分かりました…」

 怖い思いをしながら大雨の中を運転してきたけど肩透かし。

 会釈をして外に出る。

 相変わらずの大雨。

 地面に跳ね返った飛沫が、容赦なく脚に掛かる。

「あの娘、一体何してんのよっ」

 不満が口に出る。

 疾うに着いていてもおかしくなかった。

 なのに、未だに行方知れずの明日香。

 あの娘の性格から、余計な事に巻き込まれている可能性は捨て切れない。

 軒先から車に戻るだけで、髪は濡れ、ブラウスは肌に張り付く。

「ったく…。明日香にも課長にも、何か奢って貰わなきゃ気が済まないわ………」

 大雨の中、再び車を走らせる。


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