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マネキンなカノジョ
第5章 カノジョとお使い
 
「…ここ…?」

 脚が棒のようになりながら、暗闇の中をブカブカの靴で歩き続けて十数分。

 一本道だっただけに迷わず着いた場所。

 それを目にした瞬間、極度の疲労感に襲われた。

「…そりゃ…確かに…ねぇ………」

 畦道を照らす外灯なんて無い。

 遠くに民家の明かりが見える開けた場所。

 そこの畑の一角に、背丈以上の樹木に囲まれた小屋があった。

『俺らもたまに使わせて貰ってんだけどさ。農家のオヤジさんが使ってるシャワー室があるんだよ』

 得意げに話す運転手の顔が思い浮かんだ。

 確かにシャワー室はあった。

 シャワー室はあったけど、シャワーだけしかなかった。

 脱衣所なんて無ければ、シャワー室自体もボロボロの小さい小屋。

 板が張られた壁は隙間だらけで、立って浴びるだけの物。

 外とは首から太腿までを隠すくらいの短い布で仕切られているだけ。

「…いくら…個人用でも……」

 グルッと周りを見回す。

 シャワー室の入り口は、密集した植え込みに面している。

 畦道には人影なんて全く無い。

 更に真っ暗な空間。

「…誰も居ないのは…分かってるけど……」

 小屋の外で裸にならなきゃいけない。

 居ないのは分かってる。

 だけど、すっぽんぽんにならなきゃいけない。

 肌はベタベタ気持ち悪い。

 小屋を見詰めて葛藤する。
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