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マネキンなカノジョ
第2章 カノジョとランジェリー
 
 手にしたメモに書かれている地図を頼りに歩みを進める。

「んっと…」

 会社を出て十数分。

 駅へと向かう人並みに逆らい、擦れ違う男性に視線を向けられながら歩く。

「お姉さんっ。良い店あるから働かない? お姉さんなら、直ぐにトップになれるからさっ」

「お姉ちゃん。ウチなら一晩で十万以上は稼………」

「ねえねえ。ちょっと、撮影とかどお? 本番とかは考えるからさぁ」

「これから呑みにでも行かなぁい?」

「ちょっと俺と良い事しようよぉ」

 繁華街へと進むにつれて、多くなってくる勧誘とナンパの声。


…私なんてダメなのに何で…?
……もっと可愛い娘【コ】とか居るのに………


 いちいち構う事も無く、地図に書かれた目的地を目指す。

 無視された鬱憤からか、背後から怒声が聞こえても気にしないで進む。

 そんな怒声に、周りを歩く通行人は気に留める素振りを見せない。

 喧騒や煌びやかな電飾に賑わう繁華街をひたすら進むと、一つの細い路地を見付けた。

「…ここかな」

 人が擦れ違うのがやっとというくらいに、薄暗く細い路地。

 賑やかな通りから脚を踏み入れると、数メートル進んだだけで静寂な別世界に迷い込んだ錯覚に陥った。

「……あってる…よね……」

 環境の余りの違いに戸惑いを覚える。

 しかし、更に路地の奥から見えてくる小さな明かりを頼りに、先へと進んでいった。
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