この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
マネキンなカノジョ
第2章 カノジョとランジェリー
「…此処…?」
目の前には間口が狭く古びたビル。
ピンク色の明かりを点した看板に書かれている店名と、メモにある店名は同じだった。
ビルの路地に面した木製の扉には、細いモザイクがかかったガラスがあるだけで、中の様子は分からない。
余りの怪しい雰囲気に、ドキドキと胸の鼓動が早くなる。
扉の豪華に飾られた把っ手に腕を伸ばすが、躊躇って引き戻す。
「…行けって言われたしね…」
数分間、腕を伸ばしたり縮めたりと繰り返したが、埒が明かないと覚悟を決める。
古い扉には不釣り合いな把っ手をギュッと掴んで一息に開けた。
扉がキィィィ…と言う軋んだ音をたてて開くと、路地とは正反対に明るい店内が視界に飛び込んだ。
ゆっくりとその空間に脚を踏み入れる。
ビルの間口の狭さに相俟って狭いながらも奥行きはある店内。
扉から数歩進んでから見回すと、壁に沿って天井までの高い棚が並んでいた。
その一段一段には小さな紙の箱が陳列されてあり、その一つを何気なく手にした時だった。
「いらっしゃい。こんな所に綺麗な女の人の客とは珍しいけど、話は聞いてるよ」
突然掛けられた声に、体をビクッと震わせる。
恐る恐る声の方を向いて軽く会釈をすれば、口髭を蓄えた声の主は店の奥へと踵を返した。
「こっちだから、着いて来て」