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マネキンなカノジョ
第6章 カノジョと砂浜
 
 明日香ばかり気に掛けるアイツの目を向かせたくて、いつもより頑張ったビキニ。

 更衣室でドキドキしながら、何度もチェックした。

 気不味い雰囲気を壊したくって、あれこれ悩んだ。

 それでもアイツは車の中で伸びていた。

 バカ兄貴の所に向かった時も、心の隅では伸びたアイツを心配してた。

 いつからかは分からない。

 気付いたら、アイツの一挙手一投足を目で追っていた。

 アイツが笑顔を向けて来るとドキッとしだした。

 自分の気持ちに気付いたのも、そう時間は掛からなかった。

 ただ、二言目には明日香の名前を出すアイツ。

 妹みたいと言っておきながら、話す表情と内容は兄貴分とは思えない。

 そんなアイツに気持ちを伝えるなんて出来なかった。

 アイツに振り向いて貰うしか出来ない。

「アタシも…弱いなぁ……」

 両脇を女の娘に挟まれたアイツの姿が小さくなっていく。

 大きめの波が押し寄せ、アイツを見送る背中越しに飲まれた。

「ゴホッ…ゴホッ…」

 蹌踉【ヨロ】けながらも立ち上がる。

 俯いた頭の毛先から水が滴る。

「海に来てるんだから…濡れたって……」

 何故だか目の下も濡れてきていた。

 理由なんて分からない。

 分からないじゃなく、考えたくない。

「…アタシ…今…こんななのに………」

 思わぬ全身ずぶ濡れ状態。

 心配して駆け寄るアイツの姿なんて無かった。

 視線だけを向ければ、とうに人混みに紛れて姿は見えなかった。

「ありゃぁ…。大変だったねぇ」

 砂浜を見詰める背後から、軽い声がした。
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