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マネキンなカノジョ
第6章 カノジョと砂浜
…何だ……くだらない……
振り返る気にもならない。
声の軽さから、ナンパだと決め付けた。
「水も滴る良い女ってトコかなぁ」
「……………」
「ビキニ姿、とっても良いねぇ」
背中に感じる視線に、鳥肌が立つ。
相手にするまでもない。
手の甲で目を擦り、沈んだ気分を引き上げる。
ジメジメした気分は、波と一緒に沖に流す。
背中からの声を無視して、明日香たちの所に戻るつもりだった。
「脚も綺麗だし、お尻もプリプリしてて感度良さそー」
砂浜に向かっていれば、膝まで海面が下がっていた。
「な、何言ってんのっ!?」
不躾な言葉に、思わず振り向いた。
「あ、やっぱり…」
何処かで見た事があるような顔があった。
「久し振りだねぇ」
日焼けしたチャラい男が笑みを向けてくる。
「……………」
思い出せそうで思い出せない。
思わず眉を寄せて顔を顰める。
「忘れちゃったぁ?」
ザブザブと海水を蹴り分けて近寄ってくるチャラ男。
半身を背後に隠して顔を覗き込んできた。
そこそこの顔立ちから、鼻を突くキツイ匂い。
何と無く、思い出せそうな気がしてきた。
それも、思い出したくもない思い。
「俺だよ俺。ヒデアキだよ、ミナちゃん」
ニヤニヤした顔を凝視する。
「…思い出し…た…」
やっぱり思い出したく無かった男だった。