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マネキンなカノジョ
第6章 カノジョと砂浜
 
 真っ黒い肌に筋骨隆々の逞しい体。

 二メートルはあろうかという大柄な男。

 厳つい顔に鋭い眼光のスキンヘッド。


…絶対…堅気の人じゃない…でしょ……


 即決だった。

 それしか考えられなかった。

 ヒデアキも同じ結論に達していたのか、体が戦慄【ワナナ】いていた。

「こんなトコで、痴漢はダメだぜぇ? アンちゃんよぉ?」

「い、いえ…。俺…僕は……その………」

 どすの利いた声と鋭い眼光に、ヒデアキの声は震える。

「あぁん? ちげぇってぇのかぁ?」

 スキンヘッドの頭を小刻みに上下に揺らす大男。

 額にピクッと青筋が浮かんでいた。

「痴漢じゃなくて、僕たちは恋人同士なんですっ」

 言い逃れようと、突然肩を抱いてきた。

 その衝撃に体がビクッと反応する。

「へぇ…。そうは見えねぇけどなぁ………」

「い、いや。そうなんですよっ。なっ、ミナっ?」

 狼狽えるヒデアキの突然の呼び捨て。

 分からなくもない。

 筋骨隆々の大男に威圧されれば、上手い事言って逃げたくもなる。

 肩を抱きながら、顔を覗き込んでくる。

 震える表情に、目で何か訴えてきている。

 分かってる。

 コイツの言いたい事は、分かってる。

「…痴漢ですっ。助けてくださいっ」

 だから、首を横に振って、大男に助けを求めた。

「あれぇぇぇっ!?」
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