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マネキンなカノジョ
第6章 カノジョと砂浜
 
「…おい…」

 素っ頓狂な声を出すヒデアキに、大男の鋭い視線が向けられた。

「俺ぁ、監視員やってんだけどよぉ。
 ちょっと話…聞こうかぁ」

 良く見れば、水着にそれらしいマークが付いていた。

 余りにも監視員らしくない監視員。

 どちらかと言えば、プロレスラーや格闘家の方がしっくりくる。

「ちょ、ちょっと待って……おい、ミナっ!」

 態度を変えて肩を掴んでくる。

 この際、呼び捨てには目を瞑る。

 必死になったヒデアキに体を揺すられる。

 しかし、胸とアソコを腕で隠した儘、そっぽを向いた。

「観念しろや、アンちゃんよぉ?」

「ひっ! い、イヤぁぁぁっ!!」

 ヒデアキの断末魔の叫び。

 聞こえない事にする。

 体の揺れが収まり、肩にあったヒデアキの手の感触が無くなった。

 ザブザブと水を掻き分ける音。

「ミナっ、ミナっ、ミナぁぁぁっ」

 勝手に名前を連呼するヒデアキ。

 その声も徐々に小さくなっていった。

 後に残ったのは、波の音だけだった。

「…あ……。水着……どうしよ……」

 ヒデアキは居なくなった。

 でも、海から出る事はまだ出来なかった。


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