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マネキンなカノジョ
第7章 カノジョとお泊り
あれ程出なかった言葉が、すんなり喉を通って口から飛び出した。
明日香の名前が出た瞬間だった。
「…え? ……美奈が…俺を…?」
戸惑うコイツに頷いてみせる。
「Loveの方だから」
言ってて恥ずかしい。
アイツの顔を見てられなくなって、とうとう俯いた。
「それは嬉しいけど…」
頭上から言葉が降り掛かる。
「けど?」
「…ホントなんかなぁ…って……」
メラメラと来た。
ここまで勇気を振り絞っても、コイツはとことん人の気を揺さ振る。
「…ちょっと…」
俯いた儘、視線をあちこちに向ける。
あった。
アイツの手を掴む。
俯きながら脚を進める。
「お、おい……」
戸惑うアイツの声なんて知らない。
ズンズンとアイツを引っ張りながら歩く。
防波堤の切れ目。
砂浜へと続く、数段の階段を下りる。
「ど、どこ行くんだよっ」
アイツを無理矢理連れ回しながら、素早く周りを見る。
近くの砂浜に人影は無い。
遥か遠くに、米粒のような影があるくらい。
「…よし…」
アイツに聞かれないように気合いを入れた。
手をグイッと引けば、アイツの体が防波堤を背にして立つ。
改めて向き合うと、恥ずかしさが再び込み上げてくる。
「み、み…な…?」
もう知らない。
女は度胸だ。
アイツの顔を見詰めた後、踵を浮かせた。