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マネキンなカノジョ
第3章 カノジョとアルコール
…忘れてたなぁ……
そう後悔しても、後の祭りだった。
「もぉっ。呑んでるのぉ?」
テーブルの反対側から、甘ったるい声が飛んでくる。
「…ちゃんと、呑んでるわよ」
「うそぉっ。グラス、全然中身減ってないよぉ?」
頭を抱えたくなる思いを感じながらも、チビチビとグラスを傾ける。
「明日香も呑んでるんだからぁ。今夜はいっぱい呑むよぉっ」
とても、普段は短い言葉しか言わない明日香とは思えない明日香がそこに居た。
「はいはい。飲み過ぎちゃダメだからね?」
「はぁいっ。…あ、店員さん、おかわりぃ」
口調まで幼さが滲み出し、店員は明日香の容姿と口調のギャップに驚きながらも注文をとっていった。
「…はあ………」
「ん? なになにぃ? どうしたのぉ?」
思わず溢れた溜息を聞いていたようで、執拗に訊いてきた明日香に『何でもないから』と短く返す。
…この娘……ビール三口くらいでも直ぐ酔っちゃうんだった……
おまけに性格変わっちゃうし………
グラスを口に付けた儘、つまみを頬張る明日香をチラリと見る。
誰が見ても綺麗と言える顔立ちに、恨めしさを通り越して、ただ呆れちゃうくらいに育った爆乳。
モデルをやってもおかしくない容姿にも拘わらず、酔えば幼児の様に幼くなる。
…この状態だと……
話してもなぁ………
固い話なんてしたら、真面な会話なんてならない気がする。
「…はぁ…。取り敢えず、呑もうか?」
明日香に遅れて、店員におかわりを頼んだ。