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マネキンなカノジョ
第5章 カノジョとお使い
 
「…まさか…これ程とは……」

 漸く駅に着いたと思えば、まさかの無人駅。

 改札を通ってみたら、真っ先に見えたのが何も無い空間。

 だだっ広い駅前には、タクシーの一台も止まっていない。

 当然、バス停にはバスの姿は無く、人影も見当たらない。

 コンビニも無ければ、建物の姿さえ無い。

 無い無い尽くしの駅前から見えるのは畑だけ。

 ここから更にバスで二十分近く揺られなきゃならない。

「…おじいちゃん…元気…かな…?」

 思わず、遠く離れて暮らすおじいちゃんを思い出す。

 それ程、長閑な景色が目の前にあった。

「…取り敢えず…バス……」

 期待も薄れて、テクテクとバス停に近づく。

 案の定だった。

 駅前からだというのに、一時間に一本あれば良い程。

 それ程までに、バスの時刻表はスカスカだった。

 ただ、運が良かったのか、あと数分後にバスが来る事で、ベンチに腰を下ろす。

 けたたましい蝉の音を耳にしながら辺りを見回す。

 有りがちな落書きが目を引く。

「…夜露死苦…とか…古っ」

 駅舎の壁に書かれた落書きに思わず呟いた。
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