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マネキンなカノジョ
第5章 カノジョとお使い
 
 何もする事が無い儘、ボーッとベンチに座り続け、ただただ、マッタリとした時間が流れる。

 遠くの山から蝉の大合唱だけが聞こえて来る。

「…暑い…」

 冷房が効いた電車から屋外に放り出された身に暑さが堪える。

 唯一の救いは、ベンチの上にボロボロの屋根が掛かっていた事だった。

 それでも、暑いものは暑い。

 額に汗が浮かぶ。

 おっぱいの谷間の汗が気持ち悪い。

 下乳の裏側が蒸れて気持ち悪い。

 気持ち悪い尽くし。

 段々と気分も落ちていく。

 視界に目新しい物など飛び込んでくる事も無く、誰かしら通る訳でも無く。

 気を紛らわせる事も出来ずに、不満顔でベンチに座り続ける。

「…帰っちゃ…ダメ…かな…」

 我慢も限界に近付いて、泣きの声が出た。

 無人駅をチラチラと見る。

 待っている間も、駅に停まった電車は数えられる程。


…運良く電車来ますように……


 もう帰る気満々。

 ベンチからスクッと立ち上がる。

 駅に数歩進んだ、そんな時だった。

「…何て…タイミング……」

 エンジンの駆動音が聞こえ、振り向いて見れば、まさかのボンネットバスが向かってきていた。

「…ここに合ってると言えば合ってるけど………」

 レトロなバスは、当たり前のようにバス停に停車した。
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