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マネキンなカノジョ
第5章 カノジョとお使い
 
「…がーん…」

 取り敢えず、課長に連絡と思ってバッグを漁ったら出た言葉。

 いくら探しても、携帯が見付からない。

 バッグを逆さにして、中身を全部散蒔【バラマ】いても携帯の姿は無かった。

「…ちょっと…携帯……」

 運転手の携帯をアテにしようとして口を開いたが、途中で止める。


…確か…バスの運転手って…
持ち込みダメだった…よね……


 この前観たテレビでやっていた気がする。

 それでも、一縷の望みで訊いてみた。

「あぁ。持ち込み禁止されてるんだよねぇ」

 いくら田舎のバス会社とは言え、規則はきちんとしていた。

 更には、このいい加減そうな運転手でも規則を守っている事に、思わず感心した。

「…仕方ないから。…気にしないで……」

 済まなそうに言った運転手に、多少の罪悪感。

 連絡も出来なければ、寄越される事も無くなった。

 かと言って、山道をヒールのあるパンプスで歩く気力もない。

 結局、窓際の席に座って、代わり映えの無い山の中を眺める。

 迎えに来るという、バス会社の人を待つしか選択肢は残されていなかった。
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